ローヤルゼリーは抗ガン作用をはじめ種々の病気の予防や治療に効果があるとされ、現在、健康食品および医薬品として広く利用されている。その有効成分の一つとして、デセン酸などの低分子化合物の報告はあるが、ローヤルゼリーの主成分である蛋白質についての研究はおくれている。中でも、量的にローヤルゼリー蛋白質の約半分以上を占める、分子量35万の糖蛋白質「アピシン」の生理学的機能は興味深い。すでに、筆者らはアピシンが細胞増殖促進作用を有することを報告した。本研究では、血清中および肝臓のコレステロールなどの脂質濃度を指標にして、ローヤルゼリー蛋白質の脂質代謝に及ぼす影響をネズミを用いて調査した。
高脂肪食を与えたネズミにおいて、飼料の蛋白質(対照として牛乳カゼインを用いた)をローヤルゼリー蛋白質に半量 または全量置き換えることにより、ネズミ血清中のLDL-コレステロール濃度、トリグリセリド濃度。リン脂質濃度が減少することが明らかとなった。一方、肝臓においてはコレステロール濃度、トリグリセリド濃度、リン脂質濃度はいずれも増加する傾向を示した。また腹腔内脂肪重量 は減少し、糞中へのコレステロール排泄量は増加した。したがって、ローヤルゼリー蛋白質は、血清脂質の肝臓への取り込み、さらに脂質の代謝を促進することにより血清脂質の濃度を低下させる作用があると考えられる。
以上の結果から、ローヤルゼリー蛋白質の摂取により、脂質代謝を改善し、動脈硬化や肥満などの生活習慣病を予防できる可能性が示唆される。